音楽ビジネスのヒント②
演奏会で必要とされるものとは?
音楽で生きるというと、演奏家や作曲家がイメージされますが、じつは音楽の周辺にはさまざまなビジネスチャンスが潜んでいます。
たとえば演奏会中に咳が出そうになったのか、飴の包み紙をガサガサと開く音。あれ、結構気になりますよね。演奏家も同様のようで、私の友人のギタリスト上垣内寿光さんも演奏中、客席から聞こえるガサガサという音は音域が高く、気になっていたそうです。そこで無音でのどを潤せる飴「サイレントキャンディ」の開発を思いつきました。ただなかなかビジネス化するのは難しく、お住まいのある広島県内の菓子や包装紙メーカーに開発を持ちかけましたが、うまくいかなかったそうです。
しかし上垣内さんは諦めることなく、協力会社を探し続け、開発を思い立って20年ほどかかりましたが、協力メーカーが得られ、商品化に成功しました。リップクリームのような容器に入った水飴で、開封時や口に入れる際に音が出にくい設計になっています。原材料にのどを潤す効果がある成分を含めて販売したところ、インターネットの通販サイトで売れ行き好調だそうです。

私はこの話をうかがって、ギタリストとして演奏活動や教育活動を行いながらも、何か問題を感じたときにはそれを解決できないか考え、製品開発につなげる姿勢に脱帽せざるを得ませんでした。
「ギタリストは演奏やギターを教える人」という固定観念ではなかなかビジネスに結びつきません。ギターやギターの演奏会周辺で起きていることに耳や目を凝らし、問題や課題を見出して、その解決方法を考える姿勢にビジネスの芽は宿ります。
みなさんが音楽活動を行う中でもさまざまな問題や課題が生じているはずです。それをいっときの問題として対応して終わるのではなく、そのような問題や課題はどうすれば根本的に解決できるかーーーそうした探求心や協力会社を探し続ける営業力、継続力の大切さをこの事例が教えてくれている気がします。