名古屋芸術大学の授業から②
ボーダーレスに学ぶ
名古屋芸術大学芸術学部には音楽、美術、デザイン、舞台芸術、芸術教養の5つの「領域」があり、その下は34もの細かいコースに分かれています。私が「とてもいいな!」と思うのは、このように専門分野が細かく分かれている一方で、これらの領域やコースの壁は低く、さまざまな分野を学ぶことができることです。例えば私も担当している人気科目の「音楽の世界」では、3割くらいの音楽領域以外の学生が履修しています。
なぜ専門領域以外のさまざまな科目を履修できるといいかというと、理由は主に3つあります。ひとつは、専門領域の学びのヒントが、他の領域に隠れていることが多いからです。例えばピアノ演奏であれば、美術を学ぶことで新たな色彩感覚を手に入れた演奏につながり得るのではないでしょうか。
2つめは、ピアノ演奏のような専門分野でトップに立つのは至難ですが、何かと組み合わせることで、独自の存在になり得ることです。例えばプロジェクトマッピングを活用した音楽活動などには、美術やデザインの学びが非常に有効ではないかと思います。私などはこの典型ですよね。おカネと就活を音楽の世界に持ち込んで、音楽ド素人の音大教授になったのですから。演奏も勉強もできない大学教授(笑)なんて、唯一無二の存在かもしれません。
3つめは、自分の能力が思わぬところに隠れている可能性があるからです。例えば私が監修した『音大出てどうするの?―マンガ『「音大卒」は武器になる』』の漫画を担当された田中マコトさんは、舞台女優を目指し音楽大学に通っていましたが、方向転換し、漫画家として成功しています。逆に最近テレビでよく見かける名古屋芸大ご卒業の呂布カルマさんは、漫画家になろうと大学でデザインを学んだ後、ラッパーとして音楽の世界で活躍されています。
ひとつの学びを深く掘り下げるのも大切ですが、いくつか掘ったり、組み合わせたりする中に、自分の最適解が隠れている可能性があることは、知っておくべきでしょう。