音大卒を「武器」に
している人々(まとめ)
5回にわたって音大卒を「武器」に、社会で活躍されている方々をご紹介しました。それぞれタイプは違いますが、学生時代には共通した特徴が見受けられます。それは、学生時代を「悩み多き時代」「行動の時代」として過ごしたことです。
音大の場合、みな将来への夢や希望を持って入ってきます。演奏家、教員、劇団女優、歌のおねえさん……。高校時代に得られる情報には限りがありますから、それらの願いはかなう前提です。しかし、「なれない!」と思う瞬間がある人が圧倒的多数だと思います。それは、あのハラミちゃんですら、例外ではありませんでした。
大事なのは「なれない!」と思った後の過ごし方。「ではどうすればいいのか?」を真剣に考え、自分の進路を切り拓く行動に移している点が、みなさんものすごく素晴らしいと思います。
その答えは簡単に見つからない場合もあります。また出した答えに進んでも、田中さんのように10年も成果が得られないことも……。それでも諦めない根性は相当なものです。
また演奏家を目指すみなさんが一番身近に感じたのは、Mさんかもしれません。ただ彼女には、私が見てきた多くの演奏家希望の音大生とは決定的に違う点がありました。「演奏家として生きる」ことがどんなに大変かを強く自覚し、学生時代からどん欲に仕事を求め、行動していた点です。それは学生時代、すでにプロだったと言っていいほどです。
そう考えると、演奏家に限らずプロの世界は、学生時代に真剣に悩み、もがき、その中から何かを得られた人のみに開かれた世界なのかもしれません。
とはいえ、これまで演奏一途で他のことを考える余裕がなかった人も多いと思います。どう悩んだらいいのか、との戸惑いの声も聞こえてきそうです。新刊マンガ『音大出てどうするの?』は、「これまでの学び」と「将来の仕事」の狭間で悩む音大生たちが、さまざまな人との関わり合いを通じて、人生の本当の目的を知り、生きる道を見出す物語です。みなさんのご参考になれば幸いです。