夢と目標の関係
前回お話しした目標は、何も演奏家に限った話ではありません。ぜひ演奏家志望以外の人も、前回のコラムはしっかり読んで頂ければと思います。そしてとても大事な話なので、もう少し夢と目標について掘り下げます。
夢と目標の関係を最も端的に表した言葉は「夢は近づけば目標に変わる」ではないでしょうか。これは大リーグで数々の記録を打ち立てたイチローさんの言葉です。超一流の彼だからこそ出てきた言葉でしょうが、どんなに優れた選手や演奏家も、一流になるにはそれなりのプロセスが必要なことを意味します。イチローさんにも大きな夢があって、でもそれは遥か彼方だったから、その前に50も100もの目標を立てて、それを一つひとつクリアしていったのでしょうね。いくつもの目標をクリアしていったら、はるか遠くにあった夢が近くに来ていることに気付いた心のありようが、感じ取れます。イチローさんですらそうなのですから、私たちが目標なしに夢をかなえられることなど、到底できません。
ですから目標は、夢をかなえるための唯一のツールといっていいほど重要です。夢が大きければ大きいほど、しっかりと目標を立て、その達成に向け必死で取り組まなければなりません。格好いい悪いとか、やりたいやりたくない、ではなく、夢の実現のためにやるべきことを明確化し、それはいつまでにやらねばならないか、どのレベルに達していなければならないか、自らに問い続けるのです。
演奏家志望の音大生の一部には、そこが欠けていると感じることがあります。中にはまだ若いから、という人まで。厳しい言い方かもしれませんが、もし「大学生はまだ若い」と思っているとすれば、即刻音楽のプロとして生きていくのはあきらめるべきです。
というのも、どの世界でもプロとして通用する人は18歳か遅くても20歳では芽が出ています。大学生である程度芽が出ていないと、プロの道はかなり難しいのが実情です。それを、わずかな確率で覆せるとすれば、それは目標設定し、それを達成し続けるしかないと私は思います。