音楽家として生きる道②
今回は「人の心をワシ掴みにするようなSomething」を、さらに深堀してみたいと思います。前回触れたハラミちゃん。第二の路線で楽しい顔してやってはいるけれど、演奏は半端ない。音大ピアノ科であれだけ弾ける人ってどのくらいいるんだろうな、というレベル(だと思う)。何よりすごいと思うのは、音大卒業後、いったん就職しながらも、演奏力を維持し続けていたことですよね。音大を卒業して一般就職した後も、やがて巡ってくるかもしれないチャンスの備えができていたことは、とてもすばらしいことだなぁ、と思います。
でもブレークするには、それだけではダメなんだと思います。音大生の中でかなりピアノが弾ける、といってもそういう人は何人もいる(ハズ)。例えば、今年はショパン国際ピアノコンクールが開催される年だけれど、164名がエントリーし、そのうち日本人は24人! すでに確固たる地位を築いている角野隼斗さんや反田恭平さんまで参加する厳しい戦いです。2人を除く22人のうち、何人がピアニストとして生き残れるか……。
そういう厳しい世界にもかかわらず、その人たちの多くを尻目に、ハラミちゃんはスイスイ前に進むんだろうな。なんか、そんな感じがします。
なぜか? 大きくはふたつです。ひとつは戦う土俵を変えていること。多くのピアニスト志願者はクラシックで勝負していますが、彼女はポップス。不思議なくらいポップスピアニストって少ないから、彼女の希少性は否が応でも高まります。そしてもうひとつは、お客様からのどんなリクエストにも応えられることです。リクエストされた曲は、ほぼすべて弾けるとか。
音大生を見ていると、「自分がしたいこと」「自分にできること」にフォーカスしがちな気がします。若いから仕方ないところはあるけれど、プロを目指すのであれば、それは客商売。「顧客にとっての価値」にフォーカスしないと、生き残るのは中々難しいのではないでしょうか。ハラミちゃんからは、改めてそんなことを教わった気がします。