音楽に彩られる人生
こんにちは、今回から連載を担当するピアニストの木野真美です。フランスから発信します。
私は桐朋学園大学を卒業してからパリ音楽院に留学し、そのまま居ついて早28年、50歳になった今、フランスでの永久ヴィザも取得して、教えたり、コンサートをして生活しています。
「音大生にエール」いいですね!私としては音楽を学ぶ全ての人、子供から大人までどんなレベルの人も応援したいですが、音大生になった人達には特に、「厳しくも素晴らしい選択をした、頑張って!」と言いたいです。大学に至るまで、あらゆる犠牲も払いながら音楽を勉強してきたと思いますが、大学を出ればいずれ、音楽を伝える側に回ることになります。教えたり、演奏会や音楽祭を企画したり、楽器に関わる仕事かも知れません。クリエイティブで無限の可能性のある仕事です。仕事でなく趣味で音楽と関わっていく人もいるでしょう。それでも音大で過ごした数年は、一般大学には無い特別な何かをあなたにもたらしているはずです。
私が音楽をやって良かったなと思うのは、人生で楽しいこと、辛く苦しいこと、どんなことも糧になるという点です。生きていて無駄がない。お得。例えば本当なら辛い別れや孤独、病に苦しんだ経験が音楽に生きてくる。勿論、自然に触れた感動や発見、出会いや再会、誕生などの嬉しい出来事だって、毎日が音楽にプラスされてゆく。何を感じて、どう話すのか、どう振舞うのか、全て音に出てしまいます。だから音楽は人生を重ねるほど深みや面白味が、自動的に出てくるという訳です。だから生きていて楽しいんです。
技術の衰えは怖いです。だから健康や身体の使い方にも気をつけるし、感性を磨こうと行動します。でももし疲れちゃって、やりたくないなとサボったとしても、そのダラけた空気がまた音楽に反映され、いい味出したりするものです。何も恐れることはありません。ただひたすら音楽を続けましょう。

「コロナで休止されていた演奏活動が徐々に再開され本当に嬉しいです。
ウクライナ戦争で辛いことも多いですが、支援コンサートも多く企画されています。」
音大生に真っ先にお伝えしたいことは、「レッスンしっかり受けてください」です。手取り足取り教えてくれる先生というものはいつまでもいません。若いうちは色んな人がアドバイスをくれます。そのうち教えてくれる人が居なくなってきます。自分というものが確立されていると、テクニックを根本的に治せる訳じゃなし、解釈も偏ってくるし、結局意見交換みたいなレッスンしか受けられなくなります。勿論それも素晴らしい事ですが、向こうが私の解釈を尊重してくれようとする姿勢に、返って残念な気持ちになる事があります。30歳にでもなれば本や楽譜、歴史的な録音や生の演奏会から自分で学び取る、そんな地道な作業がずっと続くだけになるんです。独り夜更けにベートーヴェンに語りかけてみたりね…
だからまだ現役学生なら、アルバイトばかりしてないでレッスンへ行ってください!って、アルバイトしないとレッスン行けないか…難しいところです。そんな大変さもきっとあなたの音楽に反映されてきます。頑張って!
次回はフランス留学の具体的な話に触れたいと思います。