大学に関わらずに生きていけるか?
私自身は音大生活はほとんど学校に行きませんでした。一年の時にコンクールで賞を取れたおかげで、そのまま演奏活動に入りました。当時はあまりそういう人はいなかったので、色々攻撃もされて矢面に立ちましたが、今ではそういうことは歓迎されていますよね。私たちの世代が、なんだかんだ皆さんの踏み台になっている所もあるのです。
また当時は入学した途端に留学してしまう人は結構いました。そういう人はそのまま外国に残り、中退という形になる場合も多く、逆に留学から戻って来た人は、自分の同級生はもう卒業していたりして、何となく浮いていた様子もありました。留学というのは「行く」より「帰る」時期こそが難しいものだと思います。
さてそのように音大生であっても、私たちの時代でも、ほとんど学校に関わらないで過ごしてしまう人間も少なくありませんでした。個人の実技が主体ですから、学校生活がなくても支障はありません。だからこのコロナ禍、学校とはあまり関わらずに資格だけもらうのも、音楽家として何かそれで欠如するか?という心配は何もないのです。1つ友達が出来ないと言うことを除いて。
アンサンブルは友達がいなくても勉強として出来ますが、本当の意味で友達がありがたいのは、社会に出てからうだつが上がらないときに、助けてもらうことが出来ることです。結局は同業者ですから、みんな敵でもあるわけですが、それを越えて友人がいるというのは、この業界で生きていくときに大きな心の支えになります。
お互いに助け合う心やそのタイミングを知ることができるのは、大学に通う美点です。また音楽大学は音楽業界の縮図もそこにあります。それを経験するのが良いのか悪いのかはわかりませんが、音楽大学には「音楽業界そのものがそこにある」ということを知っておくことは大切ですね。