門を叩けば開かれる
皆さんこんにちは、ピアノの斎藤雅広です。
学生の皆さんのお助けになるような、勇気が持てるようなお話を、毎回ここで出来れば良いなあと思っています。
前回は「これからは本格派の時代だ」みたいなことを書いてみました。そういう意味では、まだデビューしていない皆さんはラッキーです。ちょうど今、活動を始めたばかりのような人たち、中途半端にイヴェントのアーティストなんかでやり始めていた人は、このコロナで瞬殺でしたね。オーケストラだって廃業の危機にさらされているのですから。
だから腰を落ち着けて勉強ということですが、ここでもう1つ残念なことは外国になかなか出られなくなったということですね。クラシック音楽は歌舞伎などと同じく伝統芸能です。どんなに才能があってもその伝統を知っていなければ、ただのデタラメになりかねません。どんな天才でも必ず、その型のようなものは誰かに教えてもらわないと成り立たないのです。
ピアノだと昔の巨匠エドヴィン・フィッシャーのような人、亡くなったスコダもバレンボイムなども彼の教えを受けているので、そのレッスンでは同じ気脈の伝統が流れていましたね。
そういう伝統はまた、それぞれの国の流派もあり、ひと筋縄では行かない物ですが、日本人ですから色々な流派を広く吸収できるという利点もあります。グローバル化が進みすぎて、ポーランド人よりも日本人の方が正当なマズルカを弾ける等、そんなことも現実になっています。
昔と違って日本の演奏家もそのような伝統を受け継いでいる人が多いので、留学に頼らなくても多くのことが勉強できると思います。臆せずに演奏家の門を叩いてみましょう。実は演奏家は忙しいだけで、不親切な人はあまりいません。多くの先生に習うことはとても大切なことです。